『アウト・オン・ア・リム』
すばらしい体験をした。
遠くでアサラトと太鼓の音がして、
月は低く、大きくて、あかくて。
水と緑に囲まれていた。
樹々の黒い縁取りが、円形の舞台をつくっているようだった。
水が、高く、上がり続けている。
会話は、なかった。
このままを保持できたらな と思った。
朝が来てほしくなかった。
写真みたいに切り取りたかった。平面でなく、空間を、状況を条件を、耳に寄せる音を、満ちる香りを、両隣のふたりの、気配を。
不可能だと知っていたから、そんなものがあればいいなと、言った。
繰り返しこのときを再生できるように。
いちにちが経って、気付いた。
絵の役割は、まさにそれじゃないか。
大きい絵が描きたい。
大きい、大きい絵が描きたい。