彼女はそれを運命と呼んだ。
だってそれならそれはずっとずっと幾とせも越えて理論なんて超越してそこに在ると決められたものなのかもしれない。
ものごとが既に定められている、というのはいったい誰が考えた思想なんだろう。
容易いことだ。
そんなものを認めるのは、傷もつかないし、努力も要らないし、罪悪でもない。
あまりに一方的すぎて、どうなのだろうと思ってきた思想だけど(私はかつて『途方もない確率』と呼んでいた)、まあ別に、彼女がそう呼ぶなら、良いのかもしれない。
きっとあまりにしあわせなことだから、特別な意味をもたせようと、そういう心の動きなんだ。
だからこの出逢いを、お互いの性質を、好意と高揚を、この時期と時節とを、運命、と呼ぼう。