花の名前が知りたかった。
月がきれいだった。
花の名前が知りたかった。
夜にアニメーションの映画が観たくなって、DVDを借りに行った時、月に照り映える街路樹が美しかった。
私はその花の名前を知らなくて、きれいなものが咲いているってそれを見上げてた。
そのずっと上には月が照っていて、まだ言葉や名前のないずっと昔にこのきれいなものたちを見上げた人は、ずっと不思議でずっとこわくてずっときれいに見えたんだろうな。
もっと手の届くものにしておきたくて、名前をつけたいと思ったり、知りたいと思ったりするんだろう。
言葉は檻みたいなものなのかもしれないなあ。
月も樹々もたいへんうつくしく、春らしい朧な雲でした。
今夜もすてきだったけど、今年の一番は早春の井の頭公園で見上げた月かな。まるで置物みたいに佇んでいた水鳥が飛び立ったのに驚いた。
あの晩は佳いものばかりに満ちた晩だったな。得難い夜は秘密の箱の宝石みたいに残る。