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ここで見たこと

絵描きのなんでもない日々です。トウキョー周辺。

味噌玉

 
 
味噌玉をつくった。 
 
 
味噌玉というのはいわゆるかつての“兵糧丸”の一種で、ざっくり言ってしまえばインスタント味噌汁の原型だ。
本で得た淡いつくり方の知識だけが薄ぼんやりと残っていて、それが今月に入ってからずっと思われていた。
やろうやろうと気にかけつつも、後回しにしていたら、なんと久しぶりに読み返した本に、味噌玉についての記述があった。その小説の中身はほとんど覚えていなかったので、もはや運命的ですらある。運命の味噌玉。ああこれだと思うが早いか、本は開いて読み進めながら、さっそくフライパンを火にかけた。
材料は鰹節、味噌と小ねぎと簡単なもので、まずは試しと気負いもなく目分量でつくっていった。
火力が強すぎて鰹節が焦げてしまう失敗はあったものの、手元にあった終わりかけの米味噌の容器に炒った鰹節をそのまま入れてしまって、開封したての麦味噌とみじんに刻んだ小ねぎを足した。
味噌玉とは言うが性分が面倒くさがりなのでそのままでも良かろうと、混ぜるにとどめ丸をつくることはしなかった。
また適当量を器に入れて、お湯で溶く。
食卓に並ぶ土鍋炊きのご飯といい、生家にそういう(古を重んじるような)習慣はなかったのだが、昔から私ひとりそういうものが好きらしかった。インスタントのものというのは保存料やなにかのせいか、概しておいしくないという実際的な思いもあるにはある。
 
猫舌なので少し温度の落ちた味噌玉みそ汁を呑んだのだけれど、これが思った以上においしい。
鰹節は薄削りの大ぶりのもので、これを炒るとぱりぱりと音のする程水分が飛び、粉末状にすることができる。
味噌玉には粉と化した鰹節がそのままはいっているので、出汁どころではなくこういう味になるのかもしれない。
先日自分へ贈った出西釜の、薪で焼いた器ならではの滋味も相まって、じわっとにじみ出るようにおいしい。なにより手軽だ。
 
そういう次第で先につくった味噌玉はほとんど終わってしまい、先ほど新しく鰹節を焼いた。今回は焦がすこともなく、ぱりぱりを音たてて割れるさまもその見た目も秋深まった落ち葉の層をていしている。うつくしいしおいしいし、なによりなことだ。 
 
 
 
 

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