ほんとうの音楽の本
何回も読んでいて、くりかえしくりかえし鮮やかで、読むたび一文一文が大切になる 本がある。
そんななかの、とびきりひいきしている一冊。
『脚立の上で郵便局長がさっとタクトをあげる、黄色くまんまるい月のその中心にその先がかかる』
前回まではきっとすっと読んでいたのに、こんかいとびきり胸に詰まった部分。
ほんとうにきれい。
内容は 吹奏楽からオーケストラに変遷してく主人公の話
なんていっちゃうとものすごく味気も色気もなく記号的になっちゃうんだけど、そんなんじゃぜんぜんない。
とびきり、ほんとうの、音楽のはなし。
私は音好きだけど楽器弾きうたうたいではないから
音楽人たちにいいしれぬ憧れがあって
かれらかのじょらがこれを読んだら、いったいどんなことになるんだろう
なにをおもうんだろうって うらやましく思うよ
すべての音楽人に読んでほしい本。
『ただね、音楽家ってたいへんだとおもうよ。
だって、この世にはあらかじめ、ひどい音があふれちゃってるから。ものすごい雑踏のなかで、シャドウボクシングをつづけるようなもんだろう。だけど、いいか、きみはちゃんとその世のなかをみつめなきゃならない。この世がどんなにひどい音をたてているのか、耳をそらさずききとらなけりゃならないんだ。
ぼくがおもうに、一流の音楽家っていうのは、音の先にひろがるひどい風景のなかから、たったひとつでもいい、かすかに鳴ってるきれいな音をひろいあげ、ぼくたちの耳におおきく、とてつもなくおおきくひびかせてくれる、そういう技術をもったひとのことだよ』