吉報
星読みは生粋の星読みだったし、真実の予言者だった。そして果てない大嘘つきだ。
いまもそれは変わらない。
「吉報だぞ」
あるきつづけたふたりは丘で休息をとる。
すっかり夜になっていた。
空いっぱいの月をみて、丘のてっぺんで、星読みは2にいった。
まるであの日みたいだ、と2はおもった。
「吉報だぞ」
ある日星読みが2に言った。
「2に、おもいもかけないことがおこるだろう」
星読みは生粋の星読みだったし、真実の予言者だった。そして果てない大嘘つきだ。
2はそれをよくしっていた。
だから、2には良いことがおこるのかもしれなかったし、悪いことがおこるのかもしれなかったし、なにもおこらないのかもしれなかった。
2はそれでよかった。いつもどおり、なにもかわらない。
「そうか」
その日、水をくみにいった2は、泉のほとりで休んでいた蛇を起こしてしまった。
「ようやくぶりに眠れたというのに」
蛇は恨みのこもった目で2をみると、すばやく腕に巻きついてきた。
「わるかった、すぐにいなくなるから」
「ゆるせぬ」
言うなり蛇は2の首にするりと移動した。
「もうすこし生きていたかった」
「殺しはせぬ」
蛇は2の涙をなめた。
「わたしにかけれれた呪いをひきうけてくれればよい」
2は蛇の呪いを肩代わりした。
「あのときもそう言った」
2は星読みに言った。
「いつのことだ」
「蛇の呪いをうけた日だ」
「あの日か。それはほんとうにすばらしいな」
星読みはめずらしく笑い、2のあるいてきたあとをふりかえった。
つきあかりの丘に、ひとすじの花畑ができていた。
2のあるいたあとに、花が咲いていた。
2がひきうけた呪いは、みちゆきに花の咲く呪いだった。
蛇には随分めんどうな呪いだったのだ。
「明日だ」
星読みが言った。
良いことがおこるのかもしれなかったし、悪いことがおこるのかもしれなかったし、なにもおこらないのかもしれなかった。
2はそれでよかった。
「そうか」