ここで見たこと

絵描きのなんでもない日々です。トウキョー周辺。

さいごの絵描きになりたい。

 
 
まずはじめに 色があった。
 
 

回る踊り子は その色を思って踊った。
楽器弾きは 軌道に音をのせた。
写真家は 彼等を写した。
映像屋は 写す姿を映像にした。
批評家は 論じ、
詩人は 詩をこぼした。
 
唄うたいが こぼれた言葉で歌い、
陶芸家は 声を曲線に移し替えた。
物書きは 器の物語を書きおこして、
料理人は ぴったりの料理をこしらえた。
伝道師が おもしろおかしく話を伝え、
粘土屋が パステルトーンの人々を作った。
 
妖怪作家は よく似た妖怪に重ね合わせ、
書家が 文字にした。
布屋が 半紙をみて模様を思いつき、
縫製師は 未だかつて無いその布にぴったりの服を繕えた。
報道員が 広く服を伝え、
噺家は 事象を枕にした。
 
調香師は 噺から思いついた香りを創り、
編物屋が 香り通りのいきものを編んだ。
絵本作家が いきもののお話を作り、
劇団員達は 演じた。
監督は あらたな構想を練った。
漫画家は 舞台仕立ての原稿をおこし、
哲学者が 発想を昇華した。

  
そして絵描きは、それを色にしたのだ。