胸中の暗がりに手を伸ばすこと。
夜。ボールを抱えて外に出た。
光漏れる隣家の窓から、少しだけ、テレビの音がしている。
誰もいない真っくらな道に、街灯がぽつん。
眩しい灯りで星がみえない。
最初から 無かったのかも。
何光年も前の彼らは 今日を選ばなかったのかも。
見えない、と皆が信じる夜、そこにはなにも無いのかも。
もしもの、話。
いったい何が欲しいんだって、自問。
弾むボールを追いかける、その無意識の肉体の動きと、
けして綺麗ではない、思考の渦。
夜よりずっと暗い。
愛か? 名誉か? 資産? 繋がり? 賞賛? 尊敬? 誇り?
いったい何が欲しいんだ、何が自己実現なんだって、ひとつじゃないのは判ってて、
ただ絞めあげて、実像無い答えだって、出て来たなら軽蔑して罵って吐き捨てて敬って崇めて磨いて屠るから。冤罪。
とりあえずの形式が欲しいだけ。
ずっと煩雑で ずっと簡単なんだから。
なにもわからない。
すべてを知っている。
0と全ての間。
世界。
誤ってボールと転がって 受け身で座って見上げた空は、画用紙の黒。
太ももの痣は馬蹄型に残っていて、荒れた息で、夜をみてた。
弱ってどうしようもない。
なら、その揺らぎ表現に転換してやろう。
いましか出せないものだしてやろう って強欲。
鶏が鳴いている。