ここで見たこと

絵描きのなんでもない日々です。トウキョー周辺。

正しく呼吸をすると云うこと。

 
 
時折、不意に思える周期で、精神は弱り果てる。
 
 
物事がするりときれいに宙返りをみせるとき、道行きの闊達さや、世界の鮮やかさや、人々の皮肉や主張は、ごく当たり前だ。
私が曇りなく笑えることや、これまでとこれからの確かさと希望とを、瞬くように受け入れることも。
そういうものだと笑って 欠けた月も、千切れた会話も、空っぽの財布も愉快。
 
 
いつのまにか夜が来るみたいに、平素の平気は平気な振りになっていて、脆くなった気持ちは 頑丈なコンコルドでだって まとめられない。はらはら、ぽろり。
色に、声に、夜に雨に、アルコールに気持ちは追いやられて、だだ広い部屋も、小さな個室もかなしい。
 
ほんとうに いつのまにかなんだ。
 
今まで拾えていた幸せを拾えなくなる、
身に注ぐ、プラスの作用も見えなくなるのは。
美しい色に 責められるように思い、
足りないものばかり捜してしまうのは。
根底から投げ出して、逃げ出してしまいたくなるのは。
  
兆候にも、気付いていたのではないの?
疲労を蓄積するみたいに、暦を重ねて。涙の膜が張っている。
事象。
答えはいつだって判っているから、立ち止まる情けなさと甘えを 自責が傷つける。
自傷。
触れる肌が、震わす声があれば、温まると、倒錯しているの? 容易いものはウロであると知っている。
自称。騙る弱さ。
気休めでも欲しいのは、薔薇の、桃の香りだ。
やわらかな弦の音だ。
視界を支配する色だ。


温かなスープなど呑んだら 泣いてしまいそう。
虚言も偽善も呼称でしかなくて、感じれるものはなんだって真実だ。
力のカードが欲しい。
せせらぎも濁流も私の中にひそむなら 流れ易いよう取計らおう。
だからどうか姿を見せてって、聞き取りづらくなった耳と、狭苦しくかすむ目で願う。一歩もやっとの有様で、荒い呼吸で みんな軽やかに涼やかに泳ぎつなぐ、そう見える中で。
 
いつかの私ができてたみたいに、正しく呼吸が出来れば、と思う。
きちんと走りたいんだ。
気持ち良く泳ぎたいんだ。
胸の苦しさなんて 知らずに笑いたいんだって、
 
そんな いつもの陳腐。